国税不服審判所は同所HP上の「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」において、2019年10月から12月分の裁決事例を追加し公表しました。
それによりますと、今回公表された裁決事例は、6事例(国税通則法関係4件、所得税法関係1件、相続税関係1件)あり、6事例すべてにおいて納税者の主張が認められ、全部又は一部が取り消されております。
このうち、国税通則法関係では、相続財産の一部について、相続人がその存在を認識しながら申告しなかったとしても、重加算税の賦課要件は満たさないとした事例が挙がっております。
原処分庁は、請求人の亡母(相続人)が、当初申告で計上していなかった相続財産の一部の被相続人名義の預金について、その存在を知りながら関与税理士に伝えなかったことは、国税通則法第68条(重加算税)第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たる旨主張しました。
しかし、裁決では、相続人が本件預金を相続財産であることを認識した上で、あえて関与税理士に本件預金の存在を伝えなかったとまでは認めることはできないとしました。
また、相続人は、本件預金を原処分庁が容易に把握し得ないような他の金融機関や相続人名義以外の口座などに入金したのではなく、本件預金の口座と同じ金融機関の相続人名義の口座に入金し、調査日現在においても当該口座を解約していなかったと指摘し、本件預金を故意に当初申告の対象から除外したものとまでは認め難いとも指摘しました。
したがって、相続人が、相続税を当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものと認めることはできないから、国税通則法第68条(重加算税)第1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たるとは認められないとの判断を示しました。
その他、所得税法関係では、請求人が相続で取得した上場株式の譲渡所得に係る取得費は、当該株式の被相続人への名義書換日を取得時期とし、その時期の終値で算定することも合理的な取得費の推定方法と判断した事例なども掲載されておりますので、参考にしてください。
(注意)
上記の記載内容は、令和2年10月5日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。